夏草

短い夏の日射しに誘われ
無数の枝が空に向かう
息苦しいほどの 草の香り
レールの間をどこまでも

あざやかになる 幼い日の
夏の切り取られたワンシーン
今もそこにある 色褪せないとき
虫かごに入れそこねたアゲハ
空高く太陽に 吸い込まれていった

こぼれ落ちそな朝露のせて
目覚めた夏草 力満たす
光り輝く 水のレンズ
はかないときを 瞬かせて

呼び覚まされる 幼い日の
駆け抜ける草原のワンシーン
心に響く 風のざわめき
小川足もといくトミヨ
流れさえ見えず 吸い込まれていった



※トミヨ:川の小魚でイバラトミヨのこと。地元ではトンギョという。