釧路湿原を眺める最高の人気スポットは今では細岡展望台となっていて、
毎年かなりの観光客が訪れます。
この細岡展望台は東の端の展望台で、
対する西の端の位置にあるのが「釧路湿原展望台」です。
湿原でできる谷地坊主を形どった印象的な外観の展望台で、
細岡展望台はただ単なる丘の上の展望台ですが、
こちらの「釧路湿原展望台」はガラス張りのいわゆる全天候型展望台です。
つまり立派でお金がかかっています。
釧路市がしっかり整備した展望台で、周りには木道が整備されていて、
ちょっとした湿原散策を快適に楽しむこともできます。
しかし残念なのは、肝心の湿原の眺めなのです。
釧路湿原を紹介するパンフレットに多く掲載されているのは細岡展望台からの眺めで、
果てしなく広がる湿原の遙かなる眺めです。
「釧路湿原展望台」からの眺めも「果てしなく広がる湿原の遙かなる眺め」ではあるのですが、
決定的に足りないものがある。
それは蛇行する川です。
このあるなしが、湿原の眺めの価値を余りに大きく変えてしまう。
風景は自然が描いた一幅の絵画です。
その絵の構図や色彩、描かれているものの配置などが絶妙なときに見る人は、
「おおおっ!!」と感嘆の声を上げます。
二つの展望台の眺めを並べたとき、その優劣はもうはっきりしています。
もし「釧路湿原展望台」からの眺めしか、見ることなしに釧路湿原を後にした観光客の方には、
それは残念でしたとしか言いようがないです。
確かに空港や鶴公園から近いし、
老舗の国立公園「阿寒」への道のルート上ですからとっても便利なんです。
でも、釧路湿原の良さを知ってもらうには、「釧路湿原展望台」だけでお茶を濁してはだめです。
また来たい、ぜひ他の人にも勧めたいと思える感動は「細岡」にあります。
ところで、実は僕が最初に湿原にスケールに驚いた展望台は「細岡」ではありません。
それは小学校の遠足で登った岩保木山です。
位置的には「細岡展望台」から南西に2キロくらいのところで、
もちろん蛇行する釧路川が湿原をのたうつ様がはっきり、手に取るように見ることができます。
ここはなんせ1時間以上てくてく歩かないと達することのできない、
時間のない観光客には訪れることのできない大スケールの展望台です。
湿原くい込むようにせり出した岩保木山の頂上から眺めるんですから、その広がりはすごいです。
空の上から見下ろす感覚です。
僕が行ったときに、うわあっと感動したのは、
釧路湿原に映る雲の影が劇的に変化していく様子でした。
この巨大なみどりのスクリーンに映し出された「雲の影」。
よく晴れて青空が広がっていて、日射しはかなり強い日でした。
割と低い高さでちぎれちぎれの雲が、形を変えながら空をゆっくり移動していく。
その巨大な激しく動く影絵は、湿原の大エンターテイメントでした。
いろんな条件が揃って初めて体験できる偶然のショーです。
そして、あれほどの巨大スクリーンはきっとどこにもないでしょう。
「見渡す限り 緑のうみが 霞む地の果て 白く溶けてゆく
空と大地の重なるところ 目をこらしても捉えられず
うねる川筋 釧路川よ ヨシの絨毯 模様を描き
瞼に残るスクリーン ときめき今もまだ」