【アイスバーを手に公園へ】


小学校低学年の時の同級生に、氷菓製造会社の社長の娘、Y子ちゃんがいた。
彼女の家は地方都市の社長宅らしい、それなりの立派な邸宅で、
ぼくらはもっぱら、余裕ある彼女の専用部屋で遊んでいた。
一心不乱の遊んでいると、ばあやがニコニコして、
スイカやいちごやデラウエアなんかをお盆に盛って
運んできてくれた。

部屋で遊び飽きると近くの鶴ケ岱公園にいったものだ。
実は家から出かけるときに、いつも僕は密かに期待することがあった。
Y子ちゃんが「ちょっと待って」と言って、裏の工場に姿を消す。
「うわあ、やった」と僕はわくわくして彼女が戻るのを待った。
やがて、Y子ちゃんが両手にまだ未包装の特大アイスバーを
数本持って出てくるのだ。
僕らはアイスバーをシャキシャキかじりながら、公園に向かった。

公園では遊具コーナーはもちろんお気に入り。
滑り台、シーソー、チェーンネスト、ジャングルジム、三種類のブランコ。
あと、フライングパイレーツのような遊具や傘の形をした回転遊具など。
次々と遊具を代えて、僕らはすべてをこなしていった。

そして大好きなのが、動物コーナー。
ペンギンやあひるにちょっかいを出し、ウサギや鹿に雑草を食わせ、
エゾシカとにらめっこを挑んだりしていた。
そこには天然記念物のオジロワシもいた。
その名前は尾が白いから「オジロワシ」なのだが、
ぼくらはなんとなく、その名前が面白く、
よくオリの前で、「オジロワシにお辞儀しよ」
なんておどけて、ペコっと頭を下げたりしてた。

そのころは、僕の家にはまだ冷蔵庫がなかった。
僕が風邪で40度の熱をだし、
ふうふう言って寝てるときに、Y子ちゃんが氷を袋いっぱいに
持ってきてくれたことがあったと、
かなりあとになって母が話してくれた。